簿記3級の勘定記入で左右に迷う人へ|相手科目を間違えない転記のコツ

簿記3級の勘定記入で左右に迷う人へ|相手科目を間違えない転記のコツ アイキャッチ 秘訣

仕訳は書ける。借方と貸方も、もうそれほど迷わない。なのに、勘定記入の問題になると手が止まる。この金額は左に書くのか、右に書くのか。摘要の欄には、何の科目名を書けばいいのか。

私も、勘定記入では左右や相手科目の記入に迷ったことがある。この記事は、そこを出発点にしている。仕訳の説明はできるだけ省いて、勘定記入で迷わないための手順に絞って書いていく。

仕訳は書けるのに、勘定記入で迷う理由

仕訳と勘定記入では、見ている単位が違う。

仕訳は、一つの取引を左右に分けて書く。「4月1日に商品を売って、現金を受け取った」という取引一つにつき、仕訳が一つ。見ているのは取引だ。

勘定記入は、その仕訳を科目ごとの帳面に書き分ける作業だ。現金なら現金勘定、売上なら売上勘定。一つの仕訳が、二つ以上の勘定に分かれて入っていく。見ているのは取引ではなく、科目になる。

この切り替えができていないと、迷いが二つ出てくる。

一つは左右。現金勘定に書こうとしているのに、仕訳全体を眺めて「売上は貸方だから」と、別の科目の位置につられてしまう。

もう一つは相手科目。勘定の摘要欄に何を書くのかがはっきりせず、自分の科目名を書いてしまったり、何も書かずに空けてしまったりする。

仕訳が正しく書けているなら、視点を「取引」から「科目」に切り替える手順を決めることで、転記の迷いを減らせる。まずは、仕訳で迷っているのか、正しい仕訳を勘定に写すところで迷っているのかを分けてみよう。

左右は、仕訳がもう決めてくれている

最初に押さえておきたいのは、正しい仕訳が用意できていれば、転記のたびに左右を決め直す必要はない、ということ。どちらへ記入するかは、その科目が仕訳の借方・貸方のどちらにあるかで決まる。

仕訳で借方にある科目は、その勘定の借方(左)に書く。貸方にある科目は、その勘定の貸方(右)に書く。ルールはこれだけだ。迷ったら、この一文に戻ればいい。

筆者cosmoのアイコンcosmo

左右は今書く科目の位置。摘要は反対側の相手。この二つを分けて見よう。

転記するときは、次の順番で進める。

  1. 仕訳の中から、転記する科目を一つ選ぶ
  2. その科目と同じ名前の勘定を探す
  3. 仕訳で借方なら勘定の借方へ、貸方なら勘定の貸方へ、日付と金額を書く
  4. 摘要欄に相手科目を書く
  5. 仕訳のもう一方の科目でも、1〜4を繰り返す

ポイントは、1で「一つだけ選ぶ」こと。現金勘定に書いている間は、現金のことだけを見る。売上が左右どちらにあるかは、売上勘定に書くときに見ればいい。一度に二つの科目を考えようとすると、左右が混ざる。

「現金が増えたから借方」という判断は、仕訳を作る段階で行う。正しい仕訳を確認できたら、転記ではその位置を引き継げばいい。ただし、仕訳自体に自信がないときは別だ。問題文に戻って取引を確認し、仕訳を直してから転記しよう。誤った仕訳を丁寧に写しても、正しい勘定記入にはならない。

相手科目は「反対側の名前」を書く

勘定の摘要欄には、相手科目を書く。相手科目とは、仕訳で反対側にある科目のことだ。

たとえば「借方:現金10,000/貸方:売上10,000」なら、現金勘定の借方には「売上 10,000」、売上勘定の貸方には「現金 10,000」と書く。

ここで扱う通常の取引では、摘要欄に自分の科目名ではなく相手科目を書く。現金勘定の見出しが「現金」だからといって、摘要欄にも現金と書くわけではない。なお、前期繰越・次期繰越などの記入は別の話。この記事では、取引の仕訳を転記するところに絞る。

こう書いておくと、あとで勘定だけを見ても「この現金は、売上で入ってきた」と取引の中身が分かる。相手科目は、その金額がどこから来たのか、どこへ行ったのかを示す目印だと考えるといい。

反対側の科目が二つ以上あり、それらをまとめて一行に記入する場合、摘要欄には「諸口(しょくち)」と書く。諸口は、一つの科目名ではなく、複数の相手科目をまとめた表記だ。たとえば、商品50,000円を売り上げ、15,000円は現金で受け取り、残りは掛けにした場合の仕訳はこうなる。

借方:現金15,000、売掛金35,000 / 貸方:売上50,000

売上勘定から見ると、反対側には現金と売掛金の二つがある。この場合、売上勘定の貸方には「諸口 50,000」と、合計の金額で書く。一方、現金勘定と売掛金勘定から見れば、反対側は売上だけ。だから、それぞれの借方に「売上 15,000」「売上 35,000」と書く。

まず「今書いている勘定から見て、反対側に科目がいくつあるか」を確認しよう。この例では、売上側で現金と売掛金をまとめるため諸口になる。同じ仕訳でも、現金側から見る相手は売上一つだけだ。問題文に摘要欄や記入方法の指定があれば、その指定を優先する。相手科目ごとに分ける形式と、一行にまとめる形式を混同しないようにしたい。

筆者cosmoのアイコンcosmo

諸口は、複数の相手科目を一行にまとめるときの表記だよ。

この例では、売上側は「諸口 50,000」。現金・売掛金側の相手は「売上」。どの勘定から見るかを分けて、最後は問題の指定に合わせよう。

現金と売掛金で、実際に転記してみる

次の取引を、勘定に記入してみよう。これは転記を練習するための例題で、実際の体験談ではない。商品売買は三分法で処理し、消耗品は購入時に消耗品費として処理する。期首残高・繰越・勘定の締切りは扱わず、次の五つの取引だけを記入する。金額の単位は円。

4月1日 商品10,000円を売り上げ、代金は現金で受け取った
4月5日 商品30,000円を掛けで売り上げた
4月20日 売掛金のうち20,000円を現金で回収した
4月25日 消耗品5,000円を現金で購入した
4月28日 商品50,000円を売り上げ、代金のうち15,000円は現金で受け取り、残額は掛けとした

自分で解くときは、答えを見る前に、まず現金勘定だけを完成させてみてほしい。仕訳の中から「現金」が出てくる行だけを拾い、左右と相手科目を書く。それが終わったら売掛金、次に売上。科目ごとに一つずつ進めると、左右が混ざらない。

できれば紙に「現金」「売掛金」「売上」「消耗品費」の四つの勘定を作り、真ん中に線を引いて左を借方、右を貸方にしておこう。うまく書けなかった箇所は消してしまう前に印を付ける。左右・摘要・金額のどこで止まったかが分かれば、見直す場所を絞れる。

ここから解答と確認。仕訳は次のとおり。

日付借方科目金額貸方科目金額
4/1現金10,000売上10,000
4/5売掛金30,000売上30,000
4/20現金20,000売掛金20,000
4/25消耗品費5,000現金5,000
4/28現金15,000売上50,000
売掛金35,000

これを、科目ごとに書き分けていく。たとえば4月20日の仕訳なら、現金勘定の借方に「売掛金 20,000」、売掛金勘定の貸方に「現金 20,000」。一つの仕訳から、二つの勘定に一行ずつ入る。

全部記入すると、次の四つの勘定になる。左が借方、右が貸方で、摘要欄が相手科目だ。左右に並ぶ行が同じ取引とは限らない点にも注意しよう。各側を日付順に読む。表が画面に収まらない場合は、左右にスクロールできる。

現金勘定
借方貸方
日付摘要金額日付摘要金額
4/1売上10,0004/25消耗品費5,000
4/20売掛金20,000
4/28売上15,000
売掛金勘定
借方貸方
日付摘要金額日付摘要金額
4/5売上30,0004/20現金20,000
4/28売上35,000
売上勘定
借方貸方
日付摘要金額日付摘要金額
4/1現金10,000
4/5売掛金30,000
4/28諸口50,000
消耗品費勘定
借方貸方
日付摘要金額日付摘要金額
4/25現金5,000

よくある記入ミスと、書いたあとの確かめ方

勘定記入でよく起きるミスと、その見つけ方をまとめておく。

摘要欄に自分の科目名を書いている

この例題で、現金勘定の摘要欄に「現金」と書いていたら、仕訳の反対側をもう一度見よう。4月1日の相手は売上、4月20日の相手は売掛金、4月25日の相手は消耗品費だ。勘定の名前と摘要欄の役割を分けると、同じ間違いを繰り返しにくくなる。

左右が逆になっている

仕訳で借方にある科目が、勘定の貸方に入っていないか。勘定を書き終えたら、仕訳の左右と一行ずつ見比べる。

諸口の使い方がずれている

4月28日の売上勘定は、この解答では相手科目を一行にまとめ、「諸口 50,000」と記入している。一方、現金勘定の相手は売上一つだけなので「売上 15,000」になる。現金勘定まで諸口にしないことが、この例の確認点だ。相手科目別に分ける記入を一律に誤りとするのではなく、問題の指定や解答欄の形式に合わせよう。

転記漏れ・金額の写し間違い

この例題では、仕訳に出てくる四つの勘定すべてに転記する。4月28日は、現金・売掛金・売上の三か所に記入が必要だ。売上だけ書いて終わりにしないように、仕訳の各科目に転記済みの印を付けて確かめよう。ただし、特定の勘定だけを問う問題では、指定された勘定が確認対象になる。

一番使える確かめ方は、相手科目をたどることだ。

現金勘定の4月20日に「売掛金 20,000」とあるなら、売掛金勘定の4月20日には「現金 20,000」が反対側に入っているはず。日付が同じ、金額が同じ、左右が逆、相手科目がお互いの名前。この四つを見比べると、転記の食い違いを見つけやすい。ただし、両方に同じ誤った金額を書いていた場合は、この確認だけでは気づけない。最後は元の仕訳と照合し、同じ取引を二度記入していないかも確かめよう。諸口の場合は、反対側の勘定の金額を合計すると、諸口の金額と一致する。4月28日なら、15,000+35,000=50,000だ。

書いたあとに一行ずつ相手をたどり、元の仕訳に戻って確かめる。左右・摘要・金額を一度に眺めるより、確認する項目を一つずつ決めた方が、どこを直すか分かりやすい。

残高でも取引の流れを確かめる

この例では、現金の借方合計は45,000円、貸方合計は5,000円で、差額は借方40,000円になる。売掛金は借方65,000円から貸方20,000円を引き、借方45,000円。売上は貸方90,000円、消耗品費は借方5,000円だ。期首残高を置いていない例題なので、ここでは今回の取引による差額を見ている。

ただし、合計が合うだけで個々の転記が正しいとは限らない。たとえば摘要を間違えても、金額の合計は変わらない。合計は最後の補助確認とし、一行ごとの日付・科目・左右・金額の照合を省かないようにしよう。

迷ったら、仕訳に戻る

勘定記入で迷ったときに戻る場所は、いつも仕訳だ。左右は仕訳が決めている。相手科目は仕訳の反対側に書いてある。勘定記入は、それを科目ごとに書き分けるだけの作業だ。

一度に全部を考えようとせず、科目を一つ選んで、その科目のことだけを書く。書き終えたら、相手科目をたどって確かめる。この手順で、次の勘定記入の問題を解いてみてほしい。

なお、そもそも仕訳の段階で何の取引か分からなくなる場合は問題文を読んでも「何の仕訳か分からない」ときの見抜き方を、仕訳の借方・貸方そのものを逆にしてしまう場合は借方・貸方を逆にしてしまう人へを先に読んでみてほしい。勘定記入の左右は仕訳で決まるので、仕訳が固まれば転記も迷いにくくなる。

コメント