テキストの例題は解ける。答えを見れば「知ってる」と思う。なのに、試験形式の問題になると手が止まる。
「覚えたはずなのに」と焦ると、もう一度最初から勉強し直したくなりますよね。でも、その前に、どこで手が止まったのかを分けてみませんか。知識が曖昧なのか、文章の意味を取れないのか、金額で迷うのかによって、必要な復習は変わります。この記事では、覚えた仕訳を初めて見る問題で使うための練習を、具体例で整理します。
覚えているのは「答えの形」
テキストで仕訳を覚えるとき、多くの場合、こういう形で頭に入ります。
文章と答えをセットにすると、基本形を思い出す助けになります。ただ、「掛け」という言葉を見つけたら売掛金、とだけ覚えていると、別の言い回しで迷うことがあります。そこで、答えの形に加えて「なぜその科目を使うのか」も確かめておきたいのです。
問題文の表現は、教材や設問によって変わります。短く整理された例もあれば、誰に何を渡し、いつ代金を受け取るかを説明する例もあります。次の二つは、言い換えを比べるための学習用の例です。実際の試験問題の引用ではありません。
この二つは、商品を売り、代金を後で受け取るという点で同じ取引です。仕訳は「借方:売掛金50,000円/貸方:売上50,000円」になります。後の文章に「掛け」はありませんが、売上代金を受け取る権利が増えたことは読み取れます。探すのは、覚えた単語そのものより、取引で何が変わったかです。
回収の場面でも比べてみましょう。「売掛金を現金で回収した」と「先月掛けで販売した商品の代金50,000円を、現金で受け取った」なら、どちらも現金が増え、売掛金が減ります。「先月分の代金」だけでは何の代金か曖昧なので、商品販売の未回収分だという条件まで読むことが大切です。
試験は「使う科目」まで指定してくる
もう一つ確かめたいのが、解答欄の指示です。日商簿記のネット試験では、仕訳問題の勘定科目はプルダウンから選択します。一方、金額や勘定科目名を入力する問題もあります。「全部選択式」とは考えず、設問ごとに指定を確認しましょう。
覚えた科目が候補に見当たらないときは、すぐ別の科目で代用せず、問題文を読み直します。現金、普通預金、当座預金は、どれでも同じように使える名前ではありません。資金の出入りの方法や、処理する取引に違いがあります。
先に「現金だろう」と決めるより、「手元の現金を払ったのか、口座から振り込んだのか、自分の小切手を振り出したのか」と確かめるほうが、判断の根拠がはっきりします。選択肢は最後の確認に使い、取引の意味と合う科目を選んでください。
たとえば、商品40,000円を仕入れ、代金は当社が小切手を振り出して支払ったとします。三分法を用い、当座預金残高が十分にある例では、次の仕訳です。本記事の仕訳例では、消費税を別に処理しないものとします。
当社が小切手を振り出したので、減るのは当社の当座預金です。「支払った」という動詞だけで現金に決めないことがポイントです。また、小切手は振出人や受取り・支払いの別でも処理が変わります。「小切手なら何でも当座預金」と覚え直してしまわないようにしましょう。
金額もそのままでは出てこない
次は金額です。教材にも試験にも、金額をそのまま使う問題と、計算して求める問題があります。問題文の数字を拾ったら、その数字が「今回の取引額」なのか、「取引前の残高」なのかを確認します。
売上代金の一部だけが入金された。掛け代金から返品分が引かれた。仕入のときに引取運賃を払った。どれも、文章の中の数字をそのまま写すのではなく、いくら動いたのかを自分で決める必要があります。
たとえば「商品30,000円を掛けで仕入れ、当社負担の引取運賃1,000円を現金で支払った」という例です。三分法では、当社が負担する仕入諸掛を仕入原価に含めるため、仕入は31,000円になります。
掛けの商品代金30,000円は買掛金、現金で払った運賃1,000円は現金の減少です。一方、仕入原価は合わせて31,000円。「何にかかった金額か」と「どう支払ったか」を分けると、一つの取引に三つの科目が出ても整理できます。
金額の落とし穴はもう一つあります。文章に出てくる数字が、必ずしも仕訳に書く数字ではないことです。
「得意先A社に対する売掛金80,000円のうち、50,000円が当座預金口座に振り込まれた」という問題なら、仕訳に書くのは50,000円です。
80,000円は回収前の売掛金残高で、今回回収した金額は50,000円です。回収後は30,000円残りますが、この残高も今回の仕訳にそのまま書く数字ではありません。「元の残高」「今回動いた金額」「残った金額」を区別すると、数字が多い文章を読みやすくなります。
覚え直すのではなく、覚え方を組み替える
ここまでの例に共通するのは、答えと一緒に「何が起きたから、その仕訳になるのか」を説明することです。暗記した基本形を捨てる必要はありません。そこに取引の意味を結びつけていきましょう。
「掛けで売り上げた」を覚えるのではなく、「代金を後で受け取る権利が増えた、そして売上が発生した」を覚える。この形で持っていれば、問題文が「月末に受け取ることとした」でも「翌月10日に振り込まれる予定」でも、同じ入口にたどり着けます。
家賃でも考えてみましょう。当月分の家賃をその月に現金で払い、事前の未払計上などがなければ、「家賃という費用の発生」と「現金の減少」と整理できます。同じ条件で普通預金から支払えば、貸方は普通預金です。ただし、翌期分の前払いや計上済みの未払い分の支払いなら、条件に応じた処理が必要です。「家賃を払えば必ず支払家賃」とまでは決めないでください。
言い回しだけが変わったのか、取引の条件まで変わったのか。ここを区別することが、基本形を応用するための一歩です。
同じ問題集の2周目は、理由も答えてみる
同じ問題集を繰り返すことにも意味があります。科目や基本ルールを思い出す練習になりますし、前に間違えた問題を解き直すこともできます。ただ、正解したという結果だけで、理解できたと判断しないようにしたいところです。
答えを覚えていたら、いったん隠して「なぜその科目なのか」「なぜこの金額なのか」を一言ずつ説明してみます。説明が止まるところがあれば、そこをテキストで確かめましょう。解き直しに理由の確認を加えることで、何を復習すべきかが見えてきます。
模試で点数が下がったとしても、暗記方法だけが原因とは限りません。時間配分、計算ミス、未習得の論点、画面操作なども確かめる必要があります。まず時間を計らずに解き直し、それなら解けるのかを比べてみてください。
1問を言い換えて、理解を確かめる
練習方法の一つとして、同じ取引を自分の言葉で書き換えてみましょう。先に、商品か備品か、代金はいつ払うか、いくらかという条件を固定します。言い換える途中で条件まで変えると、仕訳も変わってしまうからです。
たとえば「商品を掛けで仕入れた」という例題なら、こう書き換えます。
- 仕入先から商品を受け取り、代金は翌月末に支払うことにした
- 商品を受け取ったが、支払いは後日でよいと言われた
- 商品の納品を受け、代金は請求書で後払いとした
言葉は3通りですが、仕訳はどれも同じです。書き換えても同じ仕訳になることを、自分の手で確かめます。
書き換えた文章から同じ仕訳を作れるか、理由まで確かめます。その後で支払い方法を一つだけ変えて、仕訳のどこが変わるかを比べるのも練習になります。言い換えは解き直しに加える方法の一つです。問題演習や基本知識の確認と組み合わせて使ってください。
確認問題:販売と回収を分けられるか
当社は商品24,000円を得意先に販売し、代金は翌月に受け取ることにしました。翌月、そのうち9,000円が普通預金口座へ振り込まれました。三分法を用い、消費税の処理は省略して、販売時と入金時の仕訳をそれぞれ考えてみてください。
すぐに科目を埋める前に、「商品を売ったのはいつか」「今回受け取ったのはいくらか」を整理してみましょう。ここで使う数字は、販売額24,000円と回収額9,000円です。
答えと理由を開く
販売時:
(借)売掛金 24,000円 /(貸)売上 24,000円
入金時:
(借)普通預金 9,000円 /(貸)売掛金 9,000円
販売時には、売上と代金を受け取る権利が発生します。入金時は、その権利の一部が普通預金に変わっただけです。同じ販売について、入金時にもう一度売上を計上するわけではありません。回収後の売掛金は15,000円ですが、今回の入金仕訳に書くのは9,000円です。
もし入金時の貸方を売上にしたなら、販売と回収の違いを見直します。金額を24,000円にしたなら、一部入金の条件を確認します。普通預金を現金にしたなら、入金先の読み取りに戻りましょう。同じ不正解でも、復習するポイントは違います。
最後に、問題文と仕訳を逆向きに照合します。「普通預金が9,000円増え、売掛金が9,000円減った」と読んで、入金の場面に合っていれば、取引の意味から解答を確かめられています。左右の合計を合わせるだけでなく、科目と金額の理由まで確認する練習に使ってください。
次の1問で、止まった場所を確かめよう
例題は解けるのに初見の問題で止まるなら、まず一つの問題をゆっくり読み直しましょう。何を覚えていないのか、どの条件を見落としたのか。原因が違えば、戻る場所も違います。
次の答え合わせでは、「何が増減したか」「この科目を選んだ理由」「この金額になる理由」を書き添えてみてください。全部を一度にできなくても大丈夫です。説明できなかったところを一つ確かめ、もう一度、自分の力で仕訳を作る。その積み重ねで、覚えた基本形を使える場面を広げていきましょう。
なお、そもそも問題文を読んでも何の仕訳か思い浮かばない段階なら、科目名より先に見るべきことを整理した記事から先に読んでみてください。借方・貸方の位置で迷いやすい場合は、借入金・貸付金で整理する記事も合わせてどうぞ。
試験の解答形式の参照先:日本商工会議所「ネット試験に関するQ&A」。出題の見せ方は公式の3級サンプル問題でも確認できます。確認日:2026年9月9日。


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